神田駅近くの住民から３週間前に寄せられていたご相談です。

こちらのお宅では、千代田区で「去勢・不妊手術費助成事業」が始まる２０００年（平成１２年）以前から自宅ガレージと敷地で飼い主のいない猫たちに食べ物を与え、自主的に不妊・去勢手術も行なっていました。

その後、手術の事業が始まり、千代田保健所とちよだニャンとなる会が手術を徹底。子猫が生まれる心配もなく、お母様が中心となって水や食べ物を与えていました。高齢・傷病で倒れた猫をお家の中に入れてお世話し、看取ってくださったこともあります。

このたびはご親族からの相談でした。長年お母様が地域の猫たちに食べ物を与えてきたが、ご本人がいよいよ高齢となり、猫たちの面倒をみることも、引き取ることもできなくなった。２、３年前に中央区との区界の大規模工事現場から移動してきたらしい白猫にもフードを与えているが、もう無理なので、ちよだニャンとなる会で引き取ってほしい。

ちなみに、本人が捕獲器も所有していて、捕まえるのは親族が協力できる、とのことでした。

千代田保健所が相談に対応して、保健所が保管する捕獲器１台を持っていき、住民が所有する捕獲器とともに設置を始めたのが先週半ば。ところが、食べ物を食べた形跡はあるのに、ハッチが閉まらず捕まらないと、またこちらに相談が寄せられました。

商業地域で猫を捕獲する場合、会社や店舗が閉まり、在勤の餌やりさんの来ない土、日がねらい目です。猫はお腹をすかせて捕獲器に入りやすくなります。昨日の日曜の夕方、私たちが所有するスケルトン捕獲器のうち、通常より１５センチほど長いタイプのものを持っていき、小さめの紙皿を踏板の向こう側に置いて、設置。

これなら猫は首を伸ばしても食べ物だけとることはできず、確実に板を踏むでしょう。セブンイレブンで焼き鯖を買って電子レンジでチン！　おいしそうな匂いがあたりにただよっていたのでした。

翌朝、白猫さんがトラップイン！！と住民から連絡がありました。保健所がお迎えにいき、こちらで予約してあった動物病院に搬入されました。

さっそくメディカルチェックが始められ、白猫さんは女の子、耳先カットと思われる小さな切り込みがあり、お腹には昔の手術痕らしきものもかすかに見えます。千代田区でも中央区でも手術が徹底されていて、子猫が生まれることはまずありませんので、白猫さんは９０％手術済みでしょう。ウイルス検査では、猫エイズウイルス（ＦＩＶ）、猫白血病ウイルス（ＦｅＬＶ）ともに陰性。口腔内は、下顎の犬歯２本を残してすべて自然に抜け落ちたようです。やはり高齢でしょう。便検査も寄生虫等が陰性です。

神田地区の猫ということで、仮称「大神（ダイジン）」。アニメ映画「すずめの戸締り」に登場する猫の名前からとりました。

近年、ちよだニャンとなる会が保護しているのは、過去に保健所とボランティアが去勢・不妊手術を行ない、元の場所に戻した猫たちです。千代田区では、去勢・不妊手術が徹底され、子猫が生まれることはありません。若い猫が見つかることも少ないです。

今なお「飼い主のいない猫」への対策として、行政とボランティア団体が「地域猫」のセミナーを開いて普及啓発していますが、過渡期にあっては地域猫という言葉でも良いですが、地域猫は解決法ではありません。

地域猫が生きのびて高齢となった時に責任を持つのは行政？　ボランティア？　お世話していた人が家に入れて飼うという例は現実として少ないです。ボランティアが猫の一生をみるのが何となく前提となっている「地域猫活動」ではなく、自治体をあげ、ボランティアの協力を求めてＴＮＲ（Ｔｒａｐｕ／Ｎｅｕｔｅｒ／Ｒｅｔｕｒｎ＝捕獲／手術／元の場所に戻す）を徹底する。

猫が繁殖しなくなったころからは、行政が助成してボランティアが保護・譲渡を推進するのが現実的かつ有効的な猫対策と思います。

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