飼い主のいない猫は地域環境と公衆衛生の問題、動物愛護の課題です。東京都心・千代田区では2000年に区議会全会一致で【飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費助成事業】が始まり、区民を対象に普及員(ボランティア)を募集しました。これに応じて集まったボランティアがネットワークを強め、2001年に任意団体【ちよだニャンとなる会】が発足。
行政と連携協力して地域の人たちとコミュニケーションをはかり、猫たちを一時保護して動物病院で手術を行い、元の場所に戻す、地域の人たちが猫たちを見守りお世話する、という仕組みが推進されました。猫の繁殖を抑えて頭数を削減しつつ、人と動物の共生を進めていく、というのが当初の私たちの活動でした。【TNR(Trap/Neuter/Return=捕獲・去勢不妊手術・元の場所に戻す)】の徹底をめざすなかで、子猫や人に馴れている猫、馴れそうな猫については、家に迎えてくれる人を見つけて、譲渡するようになりました。
都心では大規模再開発が進み、猫たちの居場所は失われています。猫たちを一時保護して手術を行っても、元の場所に戻すことが難しくなりました。車に轢かれてしまうのが目に見えているからです。過去に手術を行い地域に戻して生きてきた猫たちも高齢化し、傷病で次々と倒れています。動物福祉・動物愛護が普及するなかで、私たちは猫を保護して譲渡をめざす活動を推進することとなりました。
少子高齢化・核家族化の影響でしょうか、【ペット】についての相談も相次いでいます。高齢者の認知症、入院、入所、死亡により行き場を失ったペットを引き取ることが増えました。過剰な頭数の猫を飼育して適正な世話ができなくなる【多頭飼育崩壊】も発生しています。
猫を引き取り、譲渡先を見つけるためには、収容施設(シェルター)が必要です。私たちは、クラウドファンディングで資金を集め、秋葉原と神田神保町に【保護猫ホーム】【老猫ホーム】を開設しました。2か所の施設には、譲渡をめざす保護猫たちが暮らすほか、高齢猫が余生を過ごしています。
行政と連携協力する私たちの活動によって、2011年【猫の殺処分ゼロ】を実現しました。千代田区から東京都動物愛護相談センターに引き取られる猫がゼロになったということです。猫が路上で命を落とす【路上死】は2000年との比較で9割削減されました。
千代田区における行政とボランティアが連携協力する取組と実績を区内外へと伝えていくのも大切な活動です。私たちは、千代田保健所地域保健課が発行する「ペットと幸せに暮らす【千代田区人と動物の共生ガイドブック】」、「猫と幸せに暮らす【千代田区人と猫の共生ハンドブック】」の編集・執筆に協力。会としては、2002年以降、定期的にニュースレターを発行するほか、SNSで情報を発信しています。2016年からは毎年千代田区と共同でチャリティイベント「ちよだ猫まつり」を開催。2023年で8年目となりました。千代田区での20年を超える取組と実績【千代田モデル】についての講演・セミナーも不定期に行っています。【ペット防災】【ペットロス】をテーマとする講演・セミナーも実施。